CMS Replacement
WordPressから次世代CMSへ
保守の負担を減らし、更新しやすいWebサイト基盤へ
この資料は、企業のコーポレートサイトで使われているWordPressを今後も使い続けるか、microCMS・EmDashへ移すかを、保守の責任・日々の更新・5年間の費用の3つの面から比べるものです。左の目次から、知りたいところへ直接移動できます。
Chapter 1
WordPressを「やめる」のではなく、運用の基盤を見直す
CMSを入れ替える目的は、新しい技術を採り入れることそのものではありません。セキュリティ対応・保守・サイト更新にかかり続けている負担を減らし、本来の情報発信に力を注げる状態をつくることです。
見直しで考える5つの観点
比べるもの:WordPress(継続)/EmDash/microCMS想定するサイト:一般的な企業のコーポレートサイト
WordPressそのものを否定するご提案ではありません。Webサイトを今後5年運用するとしたときに、保守に払い続ける費用とリスクを見直しましょう、というご提案です。
CMSが変わると、記事の作成・プレビュー・承認・公開といった普段の作業がどう変わるかも、あわせて比べます。
Chapter 2
課題は「製品」よりも「続けて運用すること」にあります
WordPressは今も高機能で、SEO・権限・テーマ・プラグイン・APIなど成熟した機能を備えています。一方で、本体・テーマ・プラグインといった複数の部品を、それぞれ更新し続ける必要があることが、企業サイトでは運用の負担になりやすい構造です。
WordPressで定期的に確認するもの
- WordPress本体セキュリティ更新が出たら、すぐの適用が勧められています。更新・動作確認
- テーマデザインを担う部品。本体の更新に合わせた対応が要ることがあります。更新・動作確認
- プラグイン機能を足す部品。数が増えるほど、確認の手間も増えます。更新・動作確認
- PHP・WebサーバーWordPressを動かす土台。古い版はサポートが終わります。更新・動作確認
- データベース記事や設定が入っている所。障害に備えて控えを取ります。バックアップ・監視
数字で見るWordPressのセキュリティ更新
2026年7月には、IPAが「速やかな更新」を呼びかけました
2026年7月22日、情報処理推進機構(IPA)は、WordPressの脆弱性2件(組み合わせると外部から任意のプログラムを動かされるおそれがあるもの)について注意喚起を出し、修正版への更新を勧めました。2026年にも、WordPressではセキュリティ更新が複数回出ています。
これは「WordPressが危険だ」という意味ではありません。インターネットに公開するソフトウェアとして、更新を当て続けることを前提に運用する必要があるということです。
問題は「更新があること」ではなく、
更新・検証・障害対応を、誰が5年間担うかです。
ライセンスが無料でも、管理まで無料になるわけではありません。5年間で見ると、保守会社へのお支払い・更新の確認・障害への対応も、CMSにかかる費用です。
適切に保守していれば、WordPressは問題なく運用できます。ただ、プラグイン更新後の確認など、記事の更新とは別の作業が続けて発生します。
Chapter 3
3つのCMSは「Webサイトの組み立て方」が違います
WordPressとEmDashは、管理画面と公開するWebサイトが1つにまとまったフルスタック型です。microCMSは、管理画面と記事のデータだけをサービスとして提供し、Webサイトは別に作るヘッドレス型です。
管理画面・表示・データの置き場所
- テーマ(表示)
- 管理画面
- WordPress本体
- プラグイン
- データベース(MySQL)
保守するのは:貴社または制作会社(サーバー会社と分担)。表示と管理画面が同じ所にあります。
- Astro(表示)
- 管理画面
- EmDash本体
- サンドボックス型プラグイン
- データベース・メディア保存(D1・PostgreSQL・SQLiteなど)
保守するのは:貴社または制作会社。Cloudflareのほか、Node.jsが動く環境にも置けます。
- Astro・Next.jsなど(表示)
- 配信・ホスティング(CDN)
- 管理画面
- 記事のデータ
- コンテンツAPI
保守するのは:管理画面とデータはmicroCMS社、表示用のWebサイトは貴社または制作会社。
貴社または制作会社が保守する部分サービス提供者が運用する部分
microCMSは、管理の仕組みそのものを外部のサービスに任せる形です。EmDashは、自社のサイトの中にCMSを持ちながら、WordPressより新しい構造に変える形です。
どちらを選んでも、管理画面から記事を更新できます。違うのは裏側で、microCMSは管理画面とWebサイトが別のサービス、EmDashは同じサイトにまとまっています。
Chapter 4
CMSの基盤として、何がどう変わるか
WordPressは成熟度と機能の多さ、microCMSは運用の基盤をサービスに任せられること、EmDashはWordPressに近い使い心地と新しい技術の両立が強みです。
| 比べる項目 | WordPress | EmDash | microCMS |
|---|---|---|---|
| しくみ | |||
| CMSの方式 | フルスタック型 | Astroを土台にしたフルスタック型 | APIで配信するヘッドレス型 |
| 表示の部分 | テーマでまとめて管理 | Astroで一緒に開発 | Astro・Next.jsなどで別に開発 |
| ライセンス | オープンソース・無料 | オープンソース(MIT)・無料 | SaaS・無料〜有料 |
| 編集の機能 | |||
| 記事・メディアの管理 | ◎成熟している | ○標準で備える | ◎サービスとして提供 |
| プレビュー・予約公開 | ◎ | ○ | ◎ |
| 過去の版に戻す | ◎ | ○ | ○Businessプラン以上 |
| 権限の管理 | ◎標準の役割あり | ○5つの役割 | ○細かな設定はBusiness以上 |
| 承認の流れ | プラグインなどで追加 | 公開の権限で分ける | ◎レビュー機能を標準で提供 |
| 拡張 | |||
| プラグイン | ◎非常に豊富 | ○新しい独自の仕組み | △WordPress型のものはない |
| SEOの支援 | ◎プラグインが豊富 | ○実装・プラグインで対応 | △表示サイト側で実装 |
| お問い合わせフォーム | ◎プラグインが豊富 | ○プラグインあり(新しい) | △外部サービス・別に実装 |
| API・AIとの連携 | REST API。AI連携は拡張で | ◎REST・CLI・MCPを標準で | ◎コンテンツAPI・管理API。MCPにも対応 |
| 保守と移行 | |||
| CMSのサーバーの保守 | 貴社・制作会社 | 貴社・制作会社 | サービス提供者 |
| 表示サイトの保守 | WordPressの中に含まれる | 必要 | 別に必要 |
| WordPressの記事の移行 | ― | 公式の取り込み機能あり | 個別に移行を設計 |
| WordPressのテーマ・プラグイン | ― | そのままでは動かない | そのままでは動かない |
| 実績と支援 | |||
| 技術の成熟度 | ◎非常に高い | △1.0の公開から間もない | ◎国内の実績が豊富 |
| 日本語の情報・支援 | ◎ | △現時点では限られる | ◎ |
| サービス品質の保証(SLA) | サーバー会社によります | 確認できていません | Enterpriseプランで提供 |
EmDashの役割は、購読者・寄稿者・投稿者・編集者・管理者の5つです。microCMSは、予約公開とレビューを全プランで提供し、Businessプランで権限管理・IPアドレス制限・過去バージョンの復元、Enterpriseプランで監査ログ・SAMLによるシングルサインオン・SLA(オプション)が加わります。
機能の数だけを見れば、WordPressが最も豊富です。移すことの価値は機能が増えることではなく、保守の責任の持ち方を変えられることにあります。
いまお使いのプラグインを、そのまま移すわけではありません。必要な業務の機能を洗い出し、新しいCMSの側で組み立て直します。
Chapter 5
「システム」ではなく「利用する企業」から見た違い
同じCMSでも、どこに良さを感じ、どこに手間を感じるかは、利用する企業の立場で変わります。3つの選択肢を、貴社から見た良い点・気をつける点で並べました。
WordPressを続ける
良い点
- 操作に慣れている
- いまの資産をそのまま使える
- 対応できる制作会社が多い
- プラグイン・テーマが非常に豊富
- 移行の初期費用がかからない
気をつける点
- 本体・テーマ・プラグインの更新管理が続く
- 更新のたびに動作の確認が要る
- サーバー・PHP・データベースを含めた保守の責任が残る
- プラグインが増えると複雑になりやすい
EmDashへ移す
良い点
- CMSとWebサイトを1つにしたまま、Astroへ刷新できる
- オープンソースのため、CMSの月額料金がない
- WordPressの記事を取り込む機能がある
- 予約公開・過去の版・権限の管理を備える
- AIと連携するMCPを標準で備える
- プラグインを区切られた環境で動かせる
気をつける点
- 2026年9月に1.0が出たばかり
- WordPressのテーマ・プラグインは使えない
- Astroでサイトを作り直す必要がある
- EmDash・サーバー環境の更新は、貴社・制作会社が担う
- 国内の長期の導入実績・対応できる会社がまだ少ない
microCMSへ移す
良い点
- CMSのサーバーの構築・更新を、自社で行わなくてよい
- 日本語の画面・情報・サポートが充実
- 記事のデータとデザインを分けて持てる
- レビュー・権限・IPアドレス制限などを使える
- 同じ記事を複数のサイトやアプリに配信できる
気をつける点
- 月額の利用料がかかる
- 表示用のサイトを別に作り、保守する必要がある
- WordPressのテーマ・プラグインは使えない
- ページの配置を担当の方だけで自由に変えたい場合は、設計に工夫が要る
- 特定のサービスに頼る形になる
microCMSの公式サイトには、WordPressからの移行を含む導入事例が掲載されています。ただし、事例の効果がすべての導入で同じように得られるとは限りません。
どれが一番高機能かではなく、自社でWebの仕組みをどこまで保守したいかで選びます。
いまWordPressでできていることを全部残す前提ではなく、本当に必要な更新の機能を整理して、より分かりやすい管理画面にすることも、移行の目的の1つです。
Chapter 6
セキュリティは「安全か危険か」ではなく、責任の分け方が変わります
攻撃をまったく受けないCMSはありません。3つの違いは、何を貴社の側で更新し、見守る必要があるかです。
- microCMSCMSの基盤を、サービス提供者に任せます。
- EmDashプラグインの権限を分けて守りを固めつつ、基盤は自社の側で持ちます。
- WordPress対策の手段は豊富ですが、自社の側の更新の責任が大きくなります。
誰が何を担うか
| 担うこと | WordPress | EmDash | microCMS |
|---|---|---|---|
| CMS本体の更新 | 自社側 | 自社側(パッケージを更新して再公開) | サービス提供者 |
| CMSを動かすサーバー・実行環境 | 自社側(サーバー会社と分担) | 自社側(Cloudflareなどの基盤を利用) | サービス提供者 |
| プラグインの安全性 | 自社側で選び、更新する | 自社側。サンドボックス型は権限を絞って動く | ―(WordPress型のプラグインはない) |
| 表示サイトのライブラリの更新 | テーマとして自社側 | 自社側 | 自社側 |
| 管理画面へのログインの守り | 自社側(プラグイン・設定で) | 自社側(設定で) | 機能を提供(2要素認証・IP制限など) |
| バックアップ | 自社側(データベースとファイル) | 自社側(データベースとメディアを別々に) | 記事はサービス側。表示サイトは自社側 |
microCMSは情報セキュリティの国際規格 ISO/IEC 27001 の認証を取得しています。Businessプランでは管理画面・APIへのIPアドレス制限、Enterpriseプランでは監査ログ・2要素認証の必須化・SAMLによるシングルサインオンを使えます。
EmDashのプラグインは、すべてが自動で隔離されるわけではありません
EmDashの特長は、公開されたプラグインを区切られた環境(サンドボックス)で、宣言した権限の範囲だけで動かせることです。入れる前に、そのプラグインが求める権限を確認できます。
一方で、サーバーの機能に直接触れられる「ネイティブ型」のプラグインもあります。また、Cloudflare上でサンドボックス型のプラグインを動かすには、有料のWorkersプランが必要です。
「攻撃されないCMS」はありません。
違うのは、何を自社で更新し、見守る必要があるかです。
セキュリティのリスクをゼロにするお話ではありません。自社で管理する範囲を減らせるかどうかが、判断の要点です。
microCMSにしても、表示サイトのライブラリの更新は残ります。EmDashにしても、CMS本体の更新は必要です。
Chapter 7
ご担当の方の日々の業務はどう変わるか
コーポレートサイトで大切なのは、CMSの機能の多さよりも、原稿の作成から公開までの流れを、迷わずに進められるかです。
記事の更新から公開までの流れ
- STEP 1原稿の作成担当の方が管理画面で書きます。
- STEP 2下書きの保存公開前の状態で保存します。
- STEP 3画面のプレビュー公開したときの見え方を確かめます。
- STEP 4社内の確認・承認上長などが内容を確認します。直しがあれば、下書きに戻します。
- STEP 5公開・予約公開すぐに、または日時を決めて公開します。
流れを支える機能
| 機能 | WordPress | EmDash | microCMS |
|---|---|---|---|
| 下書き・プレビュー | 標準で備える | 下書き・予約・公開の3つの状態を持つ | 画面プレビューを提供 |
| 確認・承認 | プラグインなどで追加 | 投稿者は自分の記事、編集者は他の人の記事も管理 | レビュー機能を全プランで提供 |
| 予約公開 | 標準で備える | 公開中のページを残したまま、次の版を予約できる | 全プランで提供 |
CMSを移したことで、ご担当の方の仕事を増やしてはいけない。当社は、この立場でCMSを選び、画面と流れを設計します。各CMSの実際の画面は、試験導入(PoC)でお試しいただけます。
Webのご担当の方が制作会社へ毎回依頼している作業を減らし、社内で更新できる範囲を広げることも、投資の効果になります。
いまの更新の手順をお聞きし、新しいCMSに業務を合わせるのではなく、必要な運用の流れにCMSの側を合わせて設計します。
Chapter 8
移行は、CMSのデータを写すだけの作業ではありません
WordPressからの移行で最も大きなリスクは、記事を移せないことではなく、URL・SEOの設定・フォーム・独自の投稿の種類・プラグインの機能など、WordPressの中に埋もれている仕様を見落とすことです。
安全に移すための5つの段階
- PHASE 1調べる
- いまのWordPressの調査
- URL・ページの棚卸し
- プラグイン・テーマ・カスタムフィールドの棚卸し
- PHASE 2設計する
- 記事の項目と種類(コンテンツモデル)の設計
- PHASE 3作って移す
- 新しいCMSの構築
- 記事・画像・PDFの移行
- PHASE 4確かめる
- URL・SEOの照合
- フォーム・アクセス解析のテスト
- ご担当の方による受け入れテスト
- PHASE 5切り替える
- DNSの切り替え・公開
- 旧WordPressを一定期間残す
- 旧環境の停止
公開を切り替える直前には、データベースとメディアをすべてバックアップし、元に戻せる地点をつくります。
EmDashへ移す場合
公式の取り込み機能(WordPressの書き出しファイル、または専用のプラグイン)で記事は移せますが、デザインと独自のプラグインの動きは、Astro・EmDashで作り直す必要があります。記事の移行と機能の移行を、分けて見積もります。
microCMSへ移す場合
いまのWordPressの記事の構造を、microCMSの項目の設計(スキーマ)に対応づける必要があります。元の記事が整理された形になっていないと、手作業での移行が増えます。コンテンツモデルの設計が、移行の品質を左右します。
移行リスクと対策のチェックリスト
概算のお見積りの前に、この表に沿って現状をお聞きします。
| 分類 | 確認する事項 | 起こりうること | 対策 |
|---|---|---|---|
| URL | いまのURLの一覧 | URLが変わり、検索評価やリンクを失う | 原則は同じURL。変える場合は301リダイレクト |
| SEO | タイトル・説明文・canonical | 検索からの流入が減る | 新旧のHTMLを自動で比べる |
| SEO | 構造化データ | 検索結果の付加情報が消える | JSON-LDを作り直す |
| SEO | XMLサイトマップ・robots.txt | 検索エンジンが正しく巡回しない | 公開前に検証 |
| 記事 | 固定ページ | 移し漏れ | サイトマップとデータベースの両方から棚卸し |
| 記事 | 投稿・独自の投稿タイプ | 新しいCMSの項目が足りない | 新しいCMSの設計へ対応づける |
| 記事 | カスタムフィールド(ACFなど) | データが欠ける | 項目ごとに移行の仕様書を作る |
| 記事 | ショートコード | 本文の表示が崩れる | 一覧にして、変換のルールを作る |
| メディア | 画像・PDF・SNS用の画像 | リンク切れ | すべてのファイルを移し、リンクを検査 |
| プラグイン | 使っているプラグインの一覧 | 機能が抜け落ちる | 「必須・代わりがある・不要」に分ける |
| フォーム | お問い合わせフォーム | 問い合わせが届かなくなる | フォームを独立した要件としてテスト |
| メール | 送信の設定・自動返信 | メールが届かない | SPF・DKIM・DMARCも含めて確認 |
| 検索 | サイト内検索 | 機能がなくなる | 新しい検索の方式を設計 |
| CMS | 下書き・プレビュー | 公開前に確認できない | 試験導入の段階でご担当の方に確認いただく |
| CMS | 予約公開 | 意図しない日時に公開される | 時間帯の設定も含めて確認 |
| CMS | 権限 | 権限が多すぎる・足りない | 編集する人・承認する人・管理する人を決める |
| 計測 | GA4・GTMなど | アクセス解析が止まる | タグの一覧を作って移す |
| Cookie | 同意の管理 | 法令・計測への影響 | いまの同意管理の仕組みを作り直す |
| セキュリティ | 管理画面へのアクセス | 不正なログイン | 多要素認証・パスキー・IP制限など |
| バックアップ | データベース・メディア | 失敗したときに戻せない | 切り替え直前にすべてバックアップ |
| DNS | TTL・切り替え | 長い時間つながらない | TTLを短くし、手順書を作る |
| 切り戻し | 旧WordPressの保持 | 障害時に元へ戻せない | 一定期間、読み取り専用で残す |
| 運用 | 操作マニュアル | 現場に定着しない | 新旧の作業の対応表を作る |
| 教育 | ご担当の方の研修 | 新しいCMSへの戸惑い | 本番前に、実際の記事で操作していただく |
「ヘッドレスCMSにすればSEOが上がる」とは言い切れません。表示の速さや検索の成果が良くなった事例はありますが、表示サイトの作り方や記事の更新量なども影響しており、CMS単体の効果とは分けて考える必要があります。
移行の費用の多くは、CMSの製品ではなく、いまのサイトの仕様を正しくつかんで移す作業にかかります。
特に、お問い合わせフォーム・過去のお知らせ・PDF・リダイレクト・カテゴリー・SEOの設定を、事前に一覧にします。
Chapter 9
「CMSの料金」ではなく、5年間の総費用で比べる
無料のCMSだから安い、SaaSだから高い、とは言えません。初期の費用に加えて、5年間にどれだけの保守の手間がかかるかまで含めて比べます。
5年間の総費用 = 移行・再構築の初期費用 + 5年間の保守の工数 + CMS・サーバーなどの利用料 + その他の運用費
モデルケースの前提
- 50〜150ページほど
- お知らせ・導入事例などをCMSで更新
- 編集する方3〜5名
- EC・会員機能なし
- いまのデザインをおおむね引き継ぐ
- URLは原則そのまま
- 人日単価 7万〜12万円(当社の想定)
- 税別
5年間の総費用の幅
Businessプランは月額75,000円から(5年で450万円)。権限管理・IPアドレス制限・過去バージョンの復元が含まれます。
Teamプランは月額4,900円(3名)に、追加1名ごとに1,200円。5名なら月額7,300円(5年で約44万円)です。権限管理・IP制限が要らない場合の目安です。
必要な管理の機能によってプランが変わり、総費用も大きく変わります。権限やIP制限が必要かどうかを、最初に確認します。
費用の内訳
| 費用 | WordPress継続 | EmDash移行 | microCMS移行 |
|---|---|---|---|
| 初期の調査・再構築 | 5〜10人日 | 25〜45人日 | 30〜50人日 |
| 初期費用(金額) | 35万〜120万円 | 175万〜540万円 | 210万〜600万円 |
| 年間の保守工数(仮定) | 12〜18人日/年 | 6〜10人日/年 | 4〜8人日/年 |
| 5年間の保守費 | 420万〜1,080万円 | 210万〜600万円 | 140万〜480万円 |
| CMSの利用料(5年) | 0円 | 0円 | 450万円(Business) |
| サーバーなど(5年) | 60万〜180万円 | 6万〜60万円 | 6万〜60万円 |
| 5年間の総費用 | 約515万〜1,380万円 | 約391万〜1,200万円 | 約806万〜1,590万円 |
| 補足 | 初期費用は小さいが、保守が多め | ライセンスは不要だが、CMSの保守は残る | CMSの保守をサービスへ移す代わりに、利用料がかかる |
工程ごとの工数の目安(EmDash・microCMS)
移行の工数は、ページ数よりも、プラグイン・カスタムフィールド・ショートコード・フォーム・検索・多言語・会員機能の有無に大きく左右されます。
| 工程 | EmDash | microCMS | 主な作業 |
|---|---|---|---|
| いまのWordPressの調査 | 2〜4人日 | 2〜4人日 | テーマ・プラグイン・投稿タイプ・URL |
| 要件・CMSの設計 | 3〜5人日 | 4〜7人日 | 記事の項目・承認の流れ |
| 表示サイトの再構築 | 8〜15人日 | 8〜15人日 | Astroなど |
| CMSの組み込み | 3〜5人日 | 3〜6人日 | API・EmDashの設定 |
| 記事の移行 | 3〜6人日 | 4〜8人日 | 50〜150ページを想定 |
| フォームなどの再実装 | 2〜5人日 | 2〜5人日 | フォーム・検索など |
| SEO・リダイレクト | 2〜3人日 | 2〜3人日 | メタ情報・サイトマップ |
| テスト・切り替え | 2〜4人日 | 3〜5人日 | 受け入れテスト・公開の切り替え |
| 合計の目安 | 25〜47人日前後 | 28〜53人日前後 | 要件により増減 |
「EmDashがいつも最も安い」とは限りません
EmDashは、1.0(2026年9月28日)のあと、1.1(10月2日)・1.2(10月7日)・1.3(10月15日)と短い間隔で更新されています。EmDash自体の更新と確認にどれだけの手間がかかるかは、今後の運用の実績で見直す必要があります。Cloudflareの有料プランは月額5米ドルからですが、データベース・保存容量・プラグインの実行量などで費用は変わります。
CMSの月額だけではなく、5年間で制作会社に何を依頼する必要があるかまで含めて比べます。
保守の費用と、記事の更新にかかる費用を分けて記録すると、移行の効果が見えやすくなります。
Chapter 10
CMSを選ぶ基準は「貴社の運用の条件」です
3つのCMSに、どんな場合にも通用する優劣はありません。次の4つの問いに順に答えると、検討する候補が絞られます。
4つの問い
- Q1いまのWordPressのプラグインや、ページビルダーに大きく頼っていますか?はい、の場合→WordPressの継続も含めて検討
- Q2CMSの基盤を、自社で保守したくないですか?はい、の場合→microCMSを第一の候補に
- Q3Astro・TypeScript・Cloudflareを活用したいですか?いいえ、の場合→microCMSを第一の候補に
- Q4新しいCMSである分の、成熟度のリスクを受け入れられますか?はい、の場合 / いいえ、の場合はい →EmDashを試験導入してから導入
いいえ →microCMS
右の答えに当てはまらない場合は、次の問いへ進みます。
それぞれが向いている企業
WooCommerceなどWordPressならではの機能に大きく頼っている、ページビルダーを社内で多く使っている、近いうちに大きな作り直しの予算が取れない、といった場合です。
会社情報・お知らせ・導入事例・採用情報など、整理しやすい記事が中心のサイトで、CMSの基盤の保守の責任を軽くしたい場合です。社内のセキュリティ審査や、日本語のサポートを重視する場合にも向いています。
Astroでサイトを刷新したい、CMSの月額を避けたい、CMSとWebサイトを1つのコードで管理したい、AIとの連携を積極的に使いたい。そのうえで、新しい技術を自社または制作会社で保守できる場合です。
すべてのお客様を同じCMSに移すのではなく、サイトの性質と会社の運用の方針に合わせて選びます。
いま使っているWordPressの機能を一覧にすると、どれが必要で、どれが不要かを判断できます。
Chapter 11
当社の考え方:実績のある案と、先を見た案の二本立て
当社は、microCMSを標準の案、EmDashを先を見た案としてご提案し、条件によってはWordPressの継続もおすすめします。表示サイトは、どちらのCMSでもAstroで作るため、CMSだけを選び替えやすい形にしています。
公式サイトでは、17,000社以上の企業での利用を掲げています。コーポレートサイトでの導入事例も多く公開されています。
2026年8月にはCloudflare自身のブログがEmDashへ移っており、大規模な本番での利用例はあります。ただし1.0の公開は2026年9月28日で、長期間の企業での利用実績はこれからです。
いまのプラグインやページビルダーの資産を残す価値が大きい場合は、無理に移さず、保守の体制を整えて使い続けることをおすすめします。
3つの評価
| 観点 | WordPress | microCMS | EmDash |
|---|---|---|---|
| 実績・成熟度 | ◎ | ◎ | △ |
| 運用の基盤を外に任せられるか | △ | ◎ | △ |
| CMSの月額の費用 | ◎ | △ | ◎ |
| 社内での説明のしやすさ | ◎ | ◎ | △ |
| 新しい技術との相性 | ○ | ◎ | ◎ |
| AIとの相性 | ○ | ○〜◎ | ◎ |
| 当面の位置づけ | 継続の案 | 標準の案 | 先を見た案 |
すべてを新しい技術へ一度に寄せるのではなく、実績のある標準の案と、将来性のある先を見た案の両方を持っておくのが安全です。
実際の管理画面と作業を試験導入(PoC)で触っていただき、機能の表だけで決めないようにします。
Chapter 12
まずCMSを決めずに、いまのWordPressの診断から始めます
いまのサイトを調べないまま入れ替えをおすすめすることはしません。移すことで本当に効果が出るかを、最初に判定します。
診断から本移行までの流れ
- STEP 1現状の診断プラグイン・テーマ・ページを棚卸しします。
- STEP 2移行の難しさの判定WordPress継続・microCMS・EmDashのどれを試すかを決めます。
- STEP 3試験導入(PoC)実際の画面で、ご担当の方に評価いただきます。
- STEP 45年間の総費用で比較・選定評価と費用をもとに、正式に選びます。
- STEP 5本移行第8章の5つの段階で移します。
最初の診断でお渡しするもの
- 01いまのWordPressの構成一覧
- 02プラグイン・テーマへの依存の度合い
- 03更新している記事の一覧
- 04URL・SEOの移行の対象
- 05移行の難しさ
- 06microCMS・EmDashそれぞれの概算
- 075年間の総費用
お見積りは3つの段階でご提示します
会社情報・お知らせなど、ページの種類が少ないサイト。
記事の種類が多く、お問い合わせなどの機能を持つサイト。
独自の機能や外部との連携、記事の量が多いサイト。
正式なお見積りは、現状の診断のあとにお出しします。EC(WooCommerceなど)・会員の認証・多言語・大量の記事の移行・独自の検索・社内システムとの連携・MA/CRMとの連携・複雑なフォーム・デザインの全面刷新は、別にお見積りします。
いまのサイトを調べないまま入れ替えをおすすめするのではなく、移すことで本当に効果が出るかを最初に判定します。
いま使っている更新の機能を実際に洗い出したうえで、新しいCMSでも業務が回ることを試験導入で確かめてから移します。
Chapter 13
EmDashについて、まだ確認できていないこと
2026年10月23日時点で公式の資料を確認した範囲では、次の事項は断定せず「確認できていない」としてお伝えします。
| 項目 | 現時点の状況 |
|---|---|
| 日本語の管理画面の正式な提供 | 未確認管理画面を各国語に切り替える仕組みはあり、多くの言語への翻訳が進んでいますが、日本語の正式な提供状況は確認できていません。 |
| 日本語での公式の商用サポート | 未確認 |
| 公式のSLA(サービス品質の保証) | 未確認 |
| 製品としての認証(ISO 27001・SOC 2など) | 未確認 |
| 長期サポート(LTS)の方針・大きな版のサポート期間 | 未確認 |
| 国内の制作会社・SIerの広がり | 未確認まだ限られているとみられますが、公式の数字はありません。 |
| ACF・Elementorなどの完全な自動変換 | 対応しない前提公式の取り込み機能は記事の移行を助けるもので、テーマ・プラグインとの互換ではありません。 |
| WordPressのプラグインとの互換 | なしEmDash独自のプラグインです。 |
| プラグインのサンドボックス | 一部サンドボックス型は対応。ネイティブ型は、本体と同じ環境で動きます。 |
| Cloudflareが必須か | 必須ではないNode.jsが動く環境でも運用できます。Cloudflareは有力な構成の1つです。 |
| CMS本体の自動更新 | 手動WordPressのように管理画面から更新する形ではなく、新しい版が出たらパッケージを更新し、再公開します。 |
EmDashは「保守の要らないWordPress」ではありません
EmDashの価値は、次の5つにあります。
- PHP・WordPress型の仕組みから抜け出す
- Astro・TypeScriptにそろえる
- プラグインの権限を分けられる
- AI・MCPとの連携を標準にする
- ライセンス料なしの、オープンソースで運用する
一方で、CMS本体・Astro・関連するパッケージ・サーバー環境の保守の責任までなくなるわけではありません。公式の資料でも、更新のたびにパッケージを入れ替えて再公開し、公開ページ・管理画面・メディア・予約公開などを確かめる手順が示されています。
まとめ:3つの選択肢が意味すること
できるだけ保守したくないならmicroCMS、サービスに頼らず新しいWeb基盤を持ちたいならEmDash、いまのプラグインや自由な編集を残す価値が大きいならWordPressの継続。「WordPressは古いので移しましょう」ではなく、今後5年間のWeb運用の方針を、貴社と一緒に決めるためのご提案です。
用語の説明
- CMSContent Management System
- Webサイトの文章や画像を、専門知識がなくても管理画面から更新できる仕組みです。
- WordPressワードプレス
- 世界で広く使われているオープンソースのCMSです。PHPで動き、テーマとプラグインで見た目と機能を整えます。
- EmDashエムダッシュ
- Cloudflare社が中心となって開発する、オープンソースのCMSです。Astroの上で動き、2026年9月に1.0が公開されました。
- microCMSマイクロシーエムエス
- 日本の株式会社microCMSが提供する、ヘッドレス型のCMSのサービス(SaaS)です。
- フルスタック型CMSFull-stack CMS
- 管理画面・記事のデータ・公開するWebサイトを、1つのシステムで持つCMSです。
- ヘッドレスCMSHeadless CMS
- 管理画面と記事のデータだけを持ち、表示のWebサイトは別に作るCMSです。記事はAPIで受け渡します。
- Astroアストロ
- 表示の速いWebサイトを作るための、オープンソースの開発の枠組み(フレームワーク)です。
- APIApplication Programming Interface
- システムどうしがデータをやり取りするための窓口です。
- MCPModel Context Protocol
- AIがほかのシステムの情報を読み書きするための共通の約束ごとです。
- サンドボックスSandbox
- プログラムを、ほかの部分から区切られた環境で、許された範囲だけで動かす仕組みです。
- SaaSSoftware as a Service
- ソフトウェアを、提供する会社のサーバーで動くサービスとして使う形です。
- SLAService Level Agreement
- サービスの稼働率などの品質を、提供する会社が約束するものです。
- PoCProof of Concept
- 本格的に導入する前に、小さく試して効果や使い心地を確かめることです。本資料では「試験導入」と呼んでいます。
- TCOTotal Cost of Ownership
- 導入から運用までにかかる費用の総額です。本資料では5年間で計算しています。
- 人日にんにち
- 1人が1日でこなす作業の量を単位にした、工数の数え方です。
- カスタムフィールド・ACFAdvanced Custom Fields
- WordPressの記事に独自の入力項目を足す機能と、その代表的なプラグインです。
- ショートコードShortcode
- WordPressの本文に [ ] で書き込み、プラグインの機能を呼び出す記法です。
- 301リダイレクト301 Redirect
- ページのURLが恒久的に変わったことを伝え、新しいURLへ案内する設定です。検索の評価を引き継ぎやすくなります。